※注意
本コンテンツは、ビョーン=オーレ カム氏より星屑が伝え聞いたノルディックLARPのフェーダーの概念について、機械翻訳などを駆使しつつ、これまでの日本でのLARP経験に基づく独自の考察を交えて書き記したものです。今後、さらに研究して内容を改編する可能性があります。また、2018年12月9日にMartin Andresen氏とご相談し内容の文面を全て見せ、日本での拡散、当サイトでのWeb掲載を正式にご許可頂きましたこと、追記させて頂きます。
LARPを考える時にはLARP構築者が催したいLARPの持つ性質を調整できる沢山のフェーダー(入力や出力のレベル設定)があります。 下記には、LARPを作るときに調整できるパラメータを例示します。あくまでも例示ですので、 他のLARP構築者は自分のフェーダーを追加したり、不要なものを取り除いたりしてください。
フェーダー表示の例
1〜5までの数字に示した5段階の横軸表や、同じような縦軸表を組み合わせてXY軸で表現したり、いくつかの要素をあわせてレーダーグラフのように表示したりしても良いでしょう。
シナリオ情報開示度
オープン vs シークレット
プレイヤーに対してLARP中に存在するキャラクターの説明やイベントなどのゲームシナリオに関する情報の開示度は、どの程度でしょうか? 全て秘密になっているのか、誰でも読むことができるのかを表します。 ゲーム開始前に参加者それぞれが持つ秘密を共有することが推奨されているでしょうか? 透明性が高ければ、プレイヤー同士がより深いドラマを作りやすくなりますが、プレイヤーにとっての意外性を損ないます。
他者に秘密に「すべき」「必要性がある」(と設定されている)秘密を持ち、プレイヤー自身がゲーム中に公開する情報を一部選択するような中間もあります。
なお、この考え方には他の項目を設けたいと感じるLARP設計者も居るでしょう。以下に代表的な事例を示します。
PCに対するイベント情報開示度
ゲーム開始前、ゲーム開始後、場面が展開される直前などに、「これからどのような出来事が起こる」等のイベントの情報が全て与えられるのか、全く与えられないのか。触りだけ与えられるのかなど、程度を示します。例えば、「これからの場面の中で、Aさんは死にます」という場合は高いイベント情報開示度であると言えるでしょう。
NPCに対するイベント情報開示度
NPCのプレイヤーに対して、イベント情報が開示されている程度を表します。大まかな内容が全て伝えられているのか。具体的な指示が細かく設定されているのか。全く逆に、ただその場に何も知らない存在として、もしくは特定の情報を知っているだけの存在として佇むのか。といった程度を示します。
キャラクター情報開示度
PCの持つ設定が開示されている程度を示します。一部秘密を持ったキャラクターがいる場合があるときなどは、中間といった風に表現されるべきでしょう。あるいは全てが秘密を持つならば、秘密性が強いことになります。
場面再現度
最大限 vs 最小限
そのLARPをする際の場面再現度はどの程度でしょうか? 準備された設定に従い、360度の風景、オブジェクトのすべてを完璧に再現する事を目指しますか?完璧な場合、プレイヤーが見るものはすべてLARPの一部です。
もしくは、設定に対して、最小限の再現に留めることを目指しますか? 風景や道具などをほとんどを使用せず、状況の説明、言語や身体的表現などのみで行い、受信する情報をプレイヤー側が意図して見えるものも見えないものと扱う場合が有りえます。
中間地点として、状況の再現のために、本格的ではないが代用可能なオブジェクトが“そのようなもの”であると見立てられ、用いられる状況があります。
キャラクターの作成
主催者 vs プレイヤー
誰がキャラクターを用意しますか? 主催者でしょうか、プレイヤーでしょうか。 または、ゲームの前に一緒に作成するかもしれません。
サンプルキャラクターとして、データ的な物が最初から用意されているものに、プレイヤーがキャラクターの背景や名前をその場で設定する事もあるでしょう。
プレイヤーが最初から作成したキャラクターは、キャラクターへの愛着をプレイヤーに与える可能性が高く、主催者の準備に費やす時間を減らす可能性があります。
一方、主催者に作成されたキャラクターは、主催者の提供するLARPの構想に矛盾しない設定と物語づくりを容易にするでしょう。
ゲームマスタリングの傾向
積極的ゲームマスタリング vs 受動的ゲームマスタリング
GMの関わり方は、積極的でしょうか? 受動的でしょうか? 積極的なGMは、LARPの進行に対して停滞が発生しないように、必要に応じてプレイヤーに判定を促したり、状況を進行させる情報をプレイを阻害しない程度に適宜得られるようにNPCへの指示を行ったり、時間の経過と共に様々な影響を与えていきます。受動的なGMは、LARPが始まった段階で全て進行をプレイヤーに託し、ゲーム的に発生する状況の観測者・判定者として存在します。
※更に受動的な段階として、本当に一切の干渉をしないマスタリングもありますが、現行の日本においては現実的ではないため、実装しないものとします。
また、別の手段として、プレイヤーに指示をして場面に送り込んだり、ある程度進行したゲームを中断して、次はそれまでの進行とは全く違う進行にするように指示したりします。
ストーリーエンジン(物語を進める力)の設定
協力 vs 競争
プレイヤーが物語を進める動機付けは、どの様に定めますか?
勝利条件の設定は、特に初心者LARPプレイヤーのモチベーションを向上するための簡単な方法です。
勝利(動機づけとなる)条件は、個別に設定する場合と集団で設定する場合が有りえます。個別に設定されているほど、競争型になっていると言えますし、集団として勝利を得るように設定されている度合いが強いほど協力型になっていきます。集団の勝利条件と、個別の勝利条件が共存できる場合もあるでしょう。
プレイヤーを一つの集団に属させ、1つの勝利条件を与える場合もあれば、プレイヤーを2つ以上の集団に属させて、競争させる場合もあるでしょう。
世界設定の忠実度合い
体験のしやすさ vs もっともらしさ
LARP設計者は、参加者のLARP体験のしやすさと、もっともらしい体験性とのトレードオフな部分を考慮する必要があります。 例えば、19世紀の時代物LARPを作るとき、女性の社長を登場させることは、時代を考慮すればあり得ない事だと捉えられかねません。しかし、LARPの設計をする上では「その立場を体験する」面白さを体験することに繋がります。
プレイヤーがLARPの設計に対応して面白いドラマや陰謀を生みだすわけです。
NPCの人数の都合上などを理由に、多くのLARPでは、シナリオに影響しないキャラクターは除かれますが、居てもよいのです。 場合によっては、ストーリーの結果が予測不能な紆余曲折な事になることもあります(往々にして、GMは悲鳴をあげるわけですが。いや、プレイヤーの方かな?)。 LARP設計者であるあなたが設定した世界は、どのような世界でしょうか。
説得力のある世界背景は、プレイヤーが世界を信じて没入するための要件であるかもしれません。
しかし、プレイヤーたちもドラマを必要とし、時おり体験をしやすくした設定がドラマを生むことがあります。
入り込みの度合い(プレイヤーのLARP世界への侵入度合い)
現実的(リアルな自分) vs 非現実的(ファンタジーのキャラクター)
プレイヤーの現実的な体験を、いかにLARPで表現される世界に浸らせるのかの度合いを示します。主催者として、プレイヤーとキャラクターの間にどの程度の障壁を設けますか?
現実的になればなるほど、キャラクターとしての行動選択とプレイヤーとしての行動選択の差が狭まっていきます。非現実的になればなるほど、行動選択の差は広がります。
現実的である場合、プレイヤー自身の経験や背景を使用することでより強い感情的な経験が生まれるかもしれません。プレイヤー自身が持つ物語や物語がもたらした感情を、LARPに取り入れることに繋がるからです。極端に言えば、LARPの世界にプレイヤー自身を演じるといった事になります。しかし、LARPを成立させる上での「現実感」をかえって低下させ「難しさ」を増すという欠点もあります。
プレイヤーにとって非現実的にする場合、キャラクターとプレイヤーの間に様々な(世界観や文化、世界線など)の障壁や距離を置くことで実現させます。プレイヤーは、キャラクターに発生した人生経験などを想像したり学んだりする必要がありますが、LARPを成立させる上での「現実感」は高まる可能性がありますし、「難しさ」は低下するかもしれません。
コミュニケーションスタイル
物理的 vs 言葉
どのようなコミュニケーションスタイルを推奨しますか?
話すことによって、もしくは身体的な行動・ボディランゲージを通してゲーム内でやりとりする方法でしょうか。
これらのコミュニケーションスタイルの方法は、キャラクターを通して、ワークショップを通して、シーンデザインを通して、またはプレイヤーに主催者が望むものを単に伝えることによって調整することができます。ボディランゲージを中心としたコミュニケーションスタイルはプレイヤーの感性を最大限に発揮させ、没頭させることができますが、慣れない参加者にとっては参加のハードルを高くするでしょう。
新しいプレイヤーを巻き込むための方法としては、言葉を主に用いて行う方が多くの場合は現実的です。
テーマの描写
抽象的 vs 模擬的
設定のリアリティをどのように描写しますか?
設定の雰囲気の模擬的再現に焦点を当てたり、ゲームの特定の側面を強調するために抽象的な、あるいはファンタジーな要素を使っているでしょうか。LARPの目的が刑務所の雰囲気を作り出すことであれば、実際の刑務所を模擬的に再現しようとするか、抽象的な要素を使用して1つの感情(刑務所内にいる人々に発生する感情など)を作り出すという方法で行う方法などがあります。
メタテクニック
全体介入型 vs 個別型
メタテクニックは、LARP中に「キャラクター」ではなく、「プレイヤー」に情報を与える技術です。日本では、「メタ思考」や「第四の壁」などと言われたりする場合もありますね。
例えば、LARP中にキャラクターや世界によって演出される内面の独白や一人芝居です。 プレイヤーはこれを聞くことができますが、キャラクターは知ることができません。メタテクニックにより得られた情報は、より強力なドラマを作成するためのきっかけになる場合があります。
メタテクニックがLARPで使用される場合は、介入型または個別型といった方法があります。
強権的なメタ技術の例は、他のすべてのプレイヤーにそれが起こっている間プレイを中止するようにする技法です。(例:タイムアウトしてプレイヤーに状況を伝えるなど) より個別的な技法は、例えば、プレイヤーが過去または未来の場面を演出することができる特別な部屋に入り、個別に情報を与えます。GMが、プレイヤーに対して個別に説明する時間を設ける場合もあるでしょう。
プレイヤーの体験への圧力度
現実としての体験 vs 見せかけとしての体験
LARPには、演技するのが難しいものがいくつかあります。 飢え、暴力、睡眠不足、飲酒、性別の変換、薬物使用などがその例です。LARPにこれらの要素を含めるにはどうすればいいでしょうか。
実際にアルコール、食糧不足、夜間に目を覚ます状況などの現実としての体験をさせる方法を使って、プレイヤーとキャラクターに圧力をかけますか? それとも、柔らかい剣、アルコールと見做した物、などの代替品を使用し、空腹になったり睡眠不足である状況に立ち会っているように演技するようにプレイヤーに指示することで、キャラクターへの圧力やストレスからプレイヤーを守っているでしょうか。例えば、キャラクターが飢えている状況を再現するために、本当にプレイヤーに空腹を与えたとして、 飢えたプレイヤーはもちろんキャラクターとしてもプレイヤーとしても空腹の気分になりますが、ロールプレイングとLARPの他の面を楽しむ能力は妨げられる可能性があります。
おわりに
いかがだったでしょうか?まあ、とはいってもはっきりと言って、有る程度LARPの設計を頭を捻りながら悩んだことがある方でなくては、このLARPフェーダーは利用されることがないだろうと言うことを自覚しながらも、僕自身がLARPを設計する上で参考にしたいがために粗訳していたものです。ご参考にしていただけましたら、幸いです。
出典 :
https://nordiclarp.org/wiki/The_Mixing_Desk_of_Larp
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